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研究テーマ/Research interests
地球上に生息する生物の多様性・共通性や複雑な生命現象を理解するには、進化的な視点が欠かせません。数理モデルを用いることによりどのような進化が起きやすいか、または起きにくいかを解明することを目指しています。現在、特に注力している研究テーマは以下の通りです。

(i) 野外の非モデル生物を対象としたゲノミクスと種分化理論
(ii) 遺伝子型・表現型・適応度をつなぐ適応度地形理論と進化実験解析
(iii) 進化生態学理論を応用したウイルス感染疾患動態予測

数理生物学はバイオインフォマティクス解析との融合研究により生物科学の様々な分野に広くフィットしており、進化的な観点からの解析で生命科学に貢献したいと考えています。
研究キーワード/Research Keywords
数理モデル/数理生物学、集団遺伝学、種分化、進化実験
これまでの研究
​1)種分化と生物多様性
地球上には数えきれないほど豊かな生物種が生息しています。現存する生物種は記載種だけでも150万種以上に達し、未記載種も含めるとその数は数百万から数千万種にのぼると言われています。この数はこれまで地球に存在し絶滅してしまった莫大な数の生物種を考慮すると、ごく僅かな割合です。生物を絶滅から救うための研究が多くなされる一方、現在の多様性がどのように実現されてきたかについて確固たる理解は得られておらず、特に新種が生まれるプロセスは絶滅に対して非常に長い時間を要するため、実証研究が容易ではないという側面もあります。
 そこで私は、理論モデルやコンピュータシミュレーションなどによる数理的手法を駆使し、種分化と自然界の種多様性のパターンにまつわる諸理論を提案しています。特に、種多様性の実現には一度の種分化ではなく、種分化が繰り返し起きることが重要なため、未解明のテーマがたくさんあります。
​2)進化実験と種分化
進化的なプロセスは従来、観察が不可能な長期スケールであるとされてきました。しかし近年、モデル生物の培養系を中心とした進化実験により、数十〜数万世代スケールでの進化動態をゲノムレベルで明らかにする研究が展開されており、進化予測理論との共同が加速しています。本研究では、国際共同研究により、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの薬剤耐性進化実験の数理モデル化、および独立に培養した系統間で交配が失敗しやすくなる種分化現象を説明する理論構築を行いました。適応度地形理論により解析した結果、薬剤濃度を急激に変化させるような選択圧の大きな進化実験では、新種が誕生しやすいことが明らかとなり、進化実験からも支持されました。
​3)分類学と生物地理学
上記のような理論研究に加え、フィールドワークに基づいた分類学的な記載研究や、ゲノムシーケンスと交配実験を組み合わせた生物地理学的な研究にも取り組んでいます。これまで対象にした生物は日本産のチョウ類やハムシ類、東南アジア産のチョウ類が主です。博物館の試料を活用した研究にも取り組んでいます。
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